犯人ゲーム



「こーじは良くも悪くもこのゲームの本当の進行役だったんだよ」


望美の語り口は何かを知っている口振りだった。


「何か知ってるのか?」


「私は、こーじの真意は知らないよ。これは私なりの解釈だからね」


頬に置かれていた手が引かれる。


行き場を失った望美の手は自身の顔へと着地した。


「……その解釈の根拠は何なんだよ?」


「根拠は、ごめんよ。それは私とこーじだけの秘密なのさ」


「…なんだよそれ」


幼なじみである自分に教えられない事なのか?


憮然とする陽一の空気を察したのか、望美は半ば無理やりに話を繋げる。


「で、あのヒントの本当の意味はね、そのままの意味なんだよ」


「……ABCの並びじゃなくて?」


「その並びじゃない。アルファベット。ただしアルファベットは英語表記だけどね」


望美の腕が暗闇の中きつ立する。


細い指が宙で何かを、優美な舞いのように描いていく。


つられて陽一は目で指を追いかけた。


「アルファベット。英語じゃ『alphabet』って書くんだけどさぁ、チェシャ猫が言ってたのはこの六文字目の事なのよん」


< 128 / 154 >

この作品をシェア

pagetop