犯人ゲーム
「こーじは良くも悪くもこのゲームの本当の進行役だったんだよ」
望美の語り口は何かを知っている口振りだった。
「何か知ってるのか?」
「私は、こーじの真意は知らないよ。これは私なりの解釈だからね」
頬に置かれていた手が引かれる。
行き場を失った望美の手は自身の顔へと着地した。
「……その解釈の根拠は何なんだよ?」
「根拠は、ごめんよ。それは私とこーじだけの秘密なのさ」
「…なんだよそれ」
幼なじみである自分に教えられない事なのか?
憮然とする陽一の空気を察したのか、望美は半ば無理やりに話を繋げる。
「で、あのヒントの本当の意味はね、そのままの意味なんだよ」
「……ABCの並びじゃなくて?」
「その並びじゃない。アルファベット。ただしアルファベットは英語表記だけどね」
望美の腕が暗闇の中きつ立する。
細い指が宙で何かを、優美な舞いのように描いていく。
つられて陽一は目で指を追いかけた。
「アルファベット。英語じゃ『alphabet』って書くんだけどさぁ、チェシャ猫が言ってたのはこの六文字目の事なのよん」