犯人ゲーム



「だから、僕は望美が犯人だとは思っていない」


受け取った銃を陽一は押し付けるように望美の手の中に戻す。


しかし望美はそれを受け取ろうとはしない。


「よーいちは私を殺さないと死ぬんだよ?」


死ぬ、か。


何故か陽一の頭の中に藍原と山吹、それに遥の死に際が浮かんだ。


一番近くて、それに生々しい死だったから想起したのだろう。


噴き出した血。重力のまま崩れる体。消えゆく命。


その全ては恐怖の対象だった。


元々、痛みには苦手な性分なのだ。


そんな自分が「死ぬ」と言われた。もし許されるならそんなのは是非ともごめんだ。


免れる為なら出来る限りの事はしよう。


けど自分自身はそれを許さないし、何より望美を殺す事など限りの中にはなかった。


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