犯人ゲーム
「あ……」
陽一は思い出す。
惨劇の終焉を。
あの時皆、マネキンを挟んで左右に、『横向に』倒れていた。
「わかった?あの時皆は側面から撃たれたように倒れ伏していた。そして一番最初にチェシャ猫は赤のマネキンを打ち抜いてる」
流石にそこまで言われれば望美の言わんとしていることはわかる。
「つまり、この部屋の左右前後からの射撃が可能。死角は無いって事か」
「そゆ事。だから」
再び陽一の胸に手ごと銃を押し付ける。
「それで私を殺して」
「無理、言うな」
「このままじゃ時間切れで陽一が死んじゃうんだょ?」
「……」
望美の言葉に陽一は逡巡を隠せない。
迷っているのだ。
どんな言葉を並べてもそれでもチラつく『死』と言う言葉。
陽一は知らず知らずの内に自分と望美の命を秤に掛けていた。