犯人ゲーム
「どうせ『犯人』もわからないのにチェシャ猫のヒントに踊らされて私達が『犯人』だって決めつけてるだけでしょ!!」
まくしたてる遥の指先が引き金に伸びる。
陽一の足はいつの間にか遥へと向かっていた。
「やめろ、遥」
遥が陽一を横目で一瞥する。
表情は硬く、向けた銃も小刻みに震えていた。
「撃てば、お前も死ぬぞ」
「黙ってて陽一」
会話の拒絶。
異様な空間はやはりクラスメートの思考を緩慢に蝕んでいた。
皆で『犯人』に対する討論は出来ず、各々の意見は空転していた。
それの始まりは紛れもなく藍原の死。
疑心暗鬼の蔓延、伝播(でんぱ)。
チェシャ猫の撒いた微少な亀裂は、ここに来てついに大きな亀裂を生んでしまった。
陽一は思い出す。
チェシャ猫と光二の対峙を。