犯人ゲーム



『ハロー♪
殺ってるねぇ、もう10人もいないみたいだよ』


なんの脈絡もなく、そんな機械じみた声が室内を覆った。ともに部屋の薄闇が駆逐される。


チェシャ猫が現れたのだ。


陽一は、まるで光に誘われる蛾のように自然と視線をそちらに向けた。


『ん~、とね。今現在で、9人かぁ』


チェシャ猫の視線が周囲を舐め回す。


ふと、陽一はチェシャ猫と目があった。


背筋に冷たいものが走る。たかが機械の、作りものの、画像の視線なはずなのに。


唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。


『君は、ペナルティだね♪』


それから、間髪入れず。何回聞いただろう、この乾いた、空気を破裂させる、死の音を。


『吉井さん。ペナルティで、処刑だねぇ♪』



< 89 / 154 >

この作品をシェア

pagetop