犯人ゲーム
光二は、視線をチェシャ猫に移す。
しかし陽一にはまだ聞きたい事があった。
けれど口は動かない。それどころか膝は笑い、陽一は崩れるように床に突っ伏した。
カツカツと床を叩く光二のローファーの振動が銃痕に響く。
陽一はぼんやりと霞む視界の中、縋るように、遠ざかる光二の背に手を伸ばす。
届かない事などわかってるのに。
聞きたい事があるからか?
助けを求めるからか?
それとも親友の凶行を止めるためか?
自問に答えはなかった。
宙空を掻く手はそれから力無く墜落する鳥のようにパサリと墜ちた。
意識の側端、聞き慣れた声と合成音声の話声が聞こえたような気がした。
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