【完】君の笑顔





「あの……岡本心の病室って何処か教えていただけますか?」



彼女が入院して数日経った時。


廊下を歩いていた僕は
後ろから誰かに声をかけられた。



振り返ると、
手に小さい花束を抱えた制服姿の高校生。


この時間帯からして
学校帰りに来てくれたのだろう。



……岡本さんの部屋は、
調べなくても分かる。



「岡本心さんは……そこを右に曲がって真っ直ぐ行った507号室です」



僕は曲がらなければならない場所を指差しながら説明する。



「部屋番号のプレートと、部屋の前に名前が書いてあるので分かると思いますよ」



僕の説明を指差した方向を見ながら真剣に聞いていたその子は、

ニッコリ笑って ありがとうございました と言うと歩きだした。



歩いていくその後ろ姿を、
ちゃんと曲がれるか見る。


ちゃんと曲がって姿が見れなくなった時、僕は再び歩きだした。



……初めて見た、
彼女の友達だった。




< 10 / 268 >

この作品をシェア

pagetop