【完】君の笑顔
「あの……岡本心の病室って何処か教えていただけますか?」
彼女が入院して数日経った時。
廊下を歩いていた僕は
後ろから誰かに声をかけられた。
振り返ると、
手に小さい花束を抱えた制服姿の高校生。
この時間帯からして
学校帰りに来てくれたのだろう。
……岡本さんの部屋は、
調べなくても分かる。
「岡本心さんは……そこを右に曲がって真っ直ぐ行った507号室です」
僕は曲がらなければならない場所を指差しながら説明する。
「部屋番号のプレートと、部屋の前に名前が書いてあるので分かると思いますよ」
僕の説明を指差した方向を見ながら真剣に聞いていたその子は、
ニッコリ笑って ありがとうございました と言うと歩きだした。
歩いていくその後ろ姿を、
ちゃんと曲がれるか見る。
ちゃんと曲がって姿が見れなくなった時、僕は再び歩きだした。
……初めて見た、
彼女の友達だった。