【完】君の笑顔
自分の想い
カサカサと紙が擦れる音と、ファイルを捲る音のみが響く室内。
顔を上げた正面には、レントゲン。
「……良くないな」
資料を見て分かっていた事を、実際に口に出したのは清水先生の方だった。
見ているのは、岡本さんの資料。
発作を起こした時の検査結果、そしてつい先日経過観察で調べた検査結果が横に並ぶ。
その隣には、前回発作を起こして運ばれて来た時の検査結果。
「……悪くなってますね」
何もせずに良くなる事なんて無いけれど、資料を横に並べて見比べてみるとハッキリと分かる。
心臓にかなりの負担がかかっている事。
もう手術をしないと限界が近い事。
「発作を起こした直後はかなり危ないけれど、落ち着けばある程度戻るんだよね……」
清水先生は、持っていたボールペンで一番最新の検査結果をトントン叩く。
最近は発作も起こらず、心電図もそこまで異常は見られていない。
「問題は次に発作が起きた時だなぁ……」
次に発作が起きた時、どうなるか。
「発作が起きる前に手術をした方が…」
「本人の承諾が得られないからね」
静かに言う清水先生に、僕は黙り込む。