【完】君の笑顔
「……と言う事でですね、次の発作を起こす前に手術を行った方が良いのですが」
検査結果を岡本さんの両親に分かりやすく見せながら、淡々と説明していく清水先生。
岡本さんの両親も真剣な表情で指された部分を見つめている。
「心ちゃんは、手術を嫌がっていますが……」
「受けさせたいです」
紙面から顔を上げて真っ直ぐ僕達の方を見て口を開く岡本さんのお父さん。
その横で岡本さんのお母さんも黙って頷く。
「高橋先生」
横で清水先生に呼ばれて僕はファイルの中から一枚の紙を取出し、ご両親の前に滑らせた。
「今は心さんは嫌がっておられますが、もし、発作を起こしてしまった場合直ぐに手術を行わないといけなくなります。
その時は心さんの意思に関係なく手術を行いますが、宜しいでしょうか?これは、その承諾書です」
最悪な状況になった時の承諾書。
本人の意志に関係なく手術をする為の。
「……心が嫌がっても、危ない時はお願いします」
しばらく紙面に目を走らせた後、再び顔を上げた岡本さんのご両親は、そう言って僕達に頭を下げた。