【完】君の笑顔
しばらくして、中庭が窓から見れる場所を通りかかった時。
いつも岡本さんが座っているあのベンチに二人の姿があった。
いつもと違うのは、
彼女が一人ではなく友達といる事。
そして、彼女が満面の笑みで友達と話していた事だった。
今まで見たことの無い表情。
一人で院内にいる時には見られない笑顔だった。
初めて見る楽しそうな笑顔に僕は思わず目を奪われた。
制服を着ていなければ高校生とは思えない程大人びているのに。
この時は可愛らしい笑顔。
ただ、呆然と景色を見ている時よりも、笑った方が良い。
発作を起こせば、その笑顔が見れなくなる。
……その笑顔を病気のせいで失わせたくない。
手術をしない理由教えてほしい。
僕が、治してあげたい。
いつしか彼女を見るたびにそう思うようになっていた。