【完】君の笑顔
「んー……心ちゃんの事だからダメだと言っても黙って抜け出すんだろう?
それなら高橋先生が一緒の方が何かあった時安心だし……」
清水先生の言葉に僕は驚く。
えっ?
僕が予想していた言葉と全く違う。
清水先生の事だから、それでも『ダメだよ』と岡本さんを諭すと思ったのに。
まさかの岡本さんの提案に賛成するような言葉。
ダメと言っても抜け出す……それは分かるけれど、僕?
「高橋先生が良いなら、許可しよう」
「やったー!先生ありがと!」
ニッコリと笑い合う2人。
やっと見せた岡本さんの心からの笑顔に、嬉しい気持ちと複雑な気持ちが交じる。
笑った方が良い、と思うけれど。
今回のこの笑顔はあまり喜べない。
「その代わり、もし行くなら絶対に高橋先生の言うことを守る事!これは約束してね。
あとは高橋先生に任せるよ」
そうまとめた清水先生は帰りぎわに立ち尽くしている僕の肩を叩いて部屋を出て行った。