【完】君の笑顔





「あたしは行きたい!せっかくのチャンス逃したくないから。高橋が行かないならあたし一人で行くから」




僕を睨むようにして岡本さんは言った。



握っていた缶を持つ手に力が入ったのが分かった。




ムキになって反抗する岡本さんに、僕もどうして分かってくれないんだ、と苛々する。



「それはさせません。
僕が休みでも、看護師に外へ出ないよう見てて貰いますから」


岡本さんに言い聞かせて説得しなければいけない立場だから、努めて穏やかに言い聞かせる。



一人でなんて行かせない。



写真展どころか、外にすらもう行かせたくない。




目を伏せて、手元を見つめている岡本さんの瞳に涙が溜まっているのがわかる。



こうやって、いつもいつも病気のせいでやりたい事も出来ず我慢してきたんだろうね。



「……分かって下さい。
写真展よりも岡本さんの体の方が大事なんですよ」




今にも泣きそうな岡本さんの頭に手を置く。


ギュッと唇を噛み締める岡本さん。




頭を撫でても、動かずじっとしている。








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