【完】君の笑顔
呼ばれて振り返ればドア付近で棒立ちになっている…この部屋のもう一人の患者さん。
僕が私服で岡本さんのベッドを見ていたから、驚いたような表情でこっちを見ていた。
この子なら岡本さんの事知ってるよね。
「……岡本さん知らない?」
「あぁ。いつもみたいに抜け出しましたよ?」
呆れた口調で話す彼女。
「いつ部屋を出たか分かる?」
「分かんないです。気付いたらいなかったので」
「そっか。ありがと」
もう一度岡本さんのベッドを見る。
……外用の靴が無い。
部屋を飛び出すと、急いでナースステーションへと行く。
「高橋先生?どうしました?今日休み……」
「岡本さんが抜け出しましたっ……!
心当たりがあるので迎えに行きますが、清水先生に報告をお願いします!」
看護師の言葉を遮って要件を告げるとまた走りだす。
急いで迎えに行かないと……。
発作を起こされたら、大変だ。
……行き先は分かってる。
ショッピングセンターのあの写真展。