【完】君の笑顔





……油断してたんだ。



岡本さんが抵抗しなくなったから。


『油断させた所で実行に移す』


って聖に言われていたのに。



実際に岡本さんにもその方法で病院から抜け出されたばっかりだったのに。



「……やっぱやだ」



緩めた瞬間そう言われて。




それと同時におもいっきり振り払われた腕。




あ、と思って掴み直そうとしたけれど、僕の手は空を切って岡本さんは走りだしていた。




走りながら、人混みの中に埋もれていく岡本さん。



「心!!?」




自分の心臓が、ドキっとしたのが分かった。



咄嗟に岡本さんの名前を呼んで、追い掛けようと走りだす。



岡本さんは全力で逃げていった。


すぐに走るのを止めるはずがない。


……何してるんだ。


発作を起こさせるような行動を僕がさせてしまった。



早く、走るのを止めさせて病院につれて帰らないと大変な事になる。










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