【完】君の笑顔
電話を切られる事を覚悟で言った。
嫌だ、とまたダダを捏ねるつもりかと思ったけど
『実はもう、帰ろうとしてるとこなんだよね』
「え?」
予想外な岡本さんの返答に、つい聞き返してしまった。
『まだ建物の中にいるけど。もう帰る』
「じゃぁ一緒に……」
帰ろう。そう提案しようとしたけれど
『自分でここまで来たから、自分で病院まで帰る。
高橋の言うとおりに今から帰るんだから文句ないでしょ?あたしが帰るまでに高橋は病院にいてよ』
遮られて先に言われてしまった。
自分で来たからって。
電車で来たんだよね?ここまで。
僕の車に乗って病院へ戻った方が体の負担も少ないし、早い。
でも……何か怪しい。
「……それ、本当ですか?」
念の為に聞くと
『うん。ほんと』
やけに素直に、そして当たり前かのように返ってくる声。
刺々しさも無く、更に僕の中で不信感が募る。