【完】君の笑顔
何も知らない人がビックリするのも当然だよね。
「……すみません、行ってください」
普通の喋り方でそう言うと、すぐに開いていたエレベーターの扉は閉まった。
再び岡本さんに視線を戻すと、固まったまま。
やっぱり。
帰るんじゃなくて、写真展に行くつもりだったんだね?
驚いたのは、写真展に行く事がバレてしまったからだけでは無いと思うけど。
岡本さんの言葉を信じて帰ったはずの僕が何故まだここにいるのかと。
思っているのかもしれない。
とにかく、もうこの手は話さないし、逃がさない。
「……どうしてそっちに行くの?出口は逆方向だよ」
電車で来たなら、駅の近くの出口から出るはずだよね?
ここからだと、正反対。
帰るつもりが無かったのがバレバレ。
「……帰ったんじゃなかったの?」
でも、僕の話を無視して岡本さんは自分の疑問をぶつけてくる。
……患者を残して帰らせるなんてできるわけない。