【完】君の笑顔
「数年様子を見て、発作を起こす事がなければ完治と判断しても良いかと」
「先生、ありがとうございました!!」
頭を下げるご両親。
……頭を下げるのは僕の方なんだ。
「岡本さん……すみませんでした」
「…高橋先生?」
「僕が早く写真展から連れて帰れば、こんな事にはならなかったと思います」
無理矢理、手術した形になってしまった。
「頭を上げてください、先生」
そう言われても、上げるつもりは無い。
半ば諦めていた岡本さんに、写真展に行こうと提案しなければ、岡本さんは諦めてそのまま病院に戻っていたはず。
なのに……。
「高橋先生?」
耳に届いた、岡本さんのお母さんの声。
やっぱり、親子だ。
こうして、聴覚だけで岡本さんのお母さんの声を聞くと、岡本さんの声にそっくり。
その声にグッと胸が締め付けられるような感覚になった。
「高橋君」
横から清水先生が静かに顔を上げさせようと肩を持ち上げる。
特に抵抗せずにそのまま頭を上げると、岡本さんのお母さんが涙ながら僕を真っ直ぐ見て微笑んでいた。