【完】君の笑顔
夕方、様子を見に行く。
部屋の前で立ち止まって、そこから岡本さんを見るとベッドの上で苦しそうに顔を歪めてどこかを見つめていた。
「……大丈夫ですか?痛い?」
声をかけながら、近付く。
僕の声を聞いてゆっくりと顔をこっちに向けた岡本さんの目には、僕の言った意味がまだ理解できていないらしく疑問の色が見えた。
自分が苦しそうな表情をしていた事に気付いてなかったの?
首を傾げて見ている岡本さんを見て、気付いてなかったんだと確信した。
「苦しそうな顔してましたよ」
「大丈夫」
このまま流しても良かったけれど、絶対に気にするだろうと思い教えれば、短く返ってくる声。
「そうですか。朝言った事、やってくれたんですね」
岡本さんはもう帰れと思っているかもしれないけれど、少しでも一緒にいてあげたくて。
僕の事を嫌いになって、顔も見たくないかもしれないけど。
僕は岡本さんの担当だから。
愚痴でも、弱音でも良い。
『大丈夫』なはずがない。
手術後、僕に言った事が岡本さんの本音だと思うから。
まだ我慢している弱音を吐きたいなら受け止めたくて。
話を広げる。