【完】君の笑顔
「良く此処が分かったね?携帯だって電源切ったままだったのに」
「部屋に行ったら居なくて、携帯も繋がらなかった時に部屋から見えた」
僕を見たままニヤリと笑う岡本さん。
「ふ〜ん。今日はいい子じゃない?ちゃんと約束通りに院内にいるけど」
院内だけど……風邪を引くから出来れば部屋に居てほしい。
そう言おうかと口を開きかけたけど、まぁ約束通りに院内に居てくれただけ進歩だ。
そう思ってる間にも、冷たい風が吹いて僕の白衣がパタパタと音を立てる。
彼女も、僅かに縮まったのを僕は見逃さなかった。
……寒さ、感じてるんだ。
「約束守ったご褒美。ほら」
視線が絡まったままの岡本さんに、僕はさっき開きかけた口から全く違う言葉を溢す。
そして、さっき岡本さんが笑ったみたいにニヤっと口角をあげて
持っていたレモンティーの缶の方を、岡本さんの頬にそのまま持っていった。