【完】君の笑顔
「……で、今は?」
「順調に回復してるよ。抜糸して少し経てば退院できる」
「そっか……でも確かその子、手術絶対嫌だって言ってたよね?」
良く覚えてるよね。
テレビ見ながら聞いていたはずなのに。
「そう。せっかく明るかったのに……僕に拒絶反応。傷も見ようとしてくれない」
「……秋」
かける言葉に迷っているんだよね。
聖の困ってる顔、久しぶりに見た。
「しょうがないけどね。無理矢理手術したような物だし……」
「別に自分責める事無いだろ?……秋は医者なんだから。人を切って治さなきゃいけないんだし」
「……すぐ思い出すんだ。岡本さんの手術が終わってから今日まで、何回か他の人の手術にも入ったのに。
岡本さんの体にメス入れた時の感触とか」
自分の手のひらを広げて見る。
ふとした時にすぐ記憶が戻ってくるんだ。
病気の苦しみは、取ってあげる事ができたかもしれないけど。
また別の苦しみを僕がつけてしまったんだ。
覚悟を決めて受けて傷ができたのと、不意討ちでされたのじゃまた違ってくるだろうし。