【完】君の笑顔
「あっつい!何!?」
缶が頬へと触れた途端、反射的に上半身を起こして起き上がる岡本さん。
今まで余裕を見せていたのが、あっという間に驚いた表情へと変わるのを見ながら
僕は空いたスペースに腰掛け岡本さんにレモンティーを差しだす。
岡本さんはそれを受け取る。
「外にいたら寒いでしょ?飲んで」
冷えた体を少しでも暖めないと、体にも悪い。
両手で包み込むように持つ岡本さんに、飲むように促すと
僕もコーヒーを喉に流し込んだ。
「ね、高橋」
「ん?」
横から話かけられて目だけで彼女を見る。
「そっち飲まして!」
僕の缶を指差しながら言う岡本さん。
えっ……僕の?
「コレ?」
「うん」
ちゃんと聞こえたけれど、念のために聞き返すと頷く。
「今そっちあげたよね?」
どうして僕のを欲しがるの。
僕は岡本さんの両手の中にあるレモンティーを指差す。
「でもコーヒーも飲みたくなったの!」
意味の分からない主張。
飲みたくなっても、あげた方を飲めば良いのに。
それにコレ、僕の飲みかけだし。
それとも、僕と同じコーヒーを買って来いと言う事?