【完】君の笑顔
「ちょっとだけちょーだい」
頭の中で咄嗟に考えていると、一向に何の動作も行わない僕に痺れを切らしたのか
いきなり手が伸びてきて、
僕の手から缶を奪うと岡本さんはそのまま口へと運んで飲んだ。
飲んだ……!
僕は慌てて缶を取り返す。
コーヒーに含まれるカフェインも、心臓には悪い。
これでもし発作が起きたら……。
飲んではいけない物を、飲んではいけない人の前で飲むべきでは無かったんだ。
そんな後悔を僕がしているとも知らず。
「間接キスだぁーとか思ってたりして?」
岡本さんはそんな呑気な事を言う。
「違います」
そんな事じゃなくて、もっと大事な事を僕は考えて……。
危険な事ばかりする岡本さんにヤケになり、僕は缶の中身を全部飲み干した。
間接キス?
確かにそうなるけど……。
僕が今言いたいのは
「わざわざレモンティーにしたのに。
また発作起こしますよ?」
これだけ。
考えて選んだのに。
ダメな物を飲まれたら、選んだ意味がない。