【完】君の笑顔
だから、あの、元気が良かった頃の岡本さんに戻って欲しい。
「……戻れるわけないじゃん」
窓に張り付いて、外の景色を見る岡本さん。
「20になったのに、お先真っ暗」
小さな声で、そう呟いた。
……そんな事無い。
寧ろ、暗かった道が明るく開いたのに。
もう病気のせいで制限されなくて、自由になったのに。
まず、その岡本さんの暗くなるような考え方をどうにか変えていかないといけないのかもね。
「真っ暗じゃないよ?今日だって可愛い服、着れてる」
あの時選んだ服を着てくれてる。
足は、タイツも履いて暖かい格好をしてくれてるし。
何より普通に可愛い。
「やっぱ黒より白だね」
「……何が?」
岡本さんは、着ている自分の服を見ながら、ワンピースの裾を正しながら聞く。
「いや、岡本さんは黒が欲しいってあさみちゃんが―――」
ハッとして、そこで不自然に止めた。
ついテンポ良く聞かれて喋りかけてしまった。
……この服選んだのが僕だって事、岡本さんは知らないんだった。