【完】君の笑顔





じっとこっちを見ている視線を感じながらも、もう黙っておこうと運転に集中する。



ついポロっと言ってしまいそうになった。



「ね、この服、高橋が選んだの?」



少しだけ喋ってしまった言葉で、その続きまでを考えたのか、正解を聞いてくる。



「高橋が選んだんでしょ?
だから、この位の首の開きだと傷が見えないって分かってギリギリのを選んだんでしょ?」



黙っていれば、今度は僕の選んだ意図までも当ててくる。




「なんとか言えば?」


黙り込んだのに苛ついたらしい。

初めから幸先を悪くしたくないので、仕方なく話す。



「……そうだよ。僕が選んだのはワンピースだけだけど」


きっと、傷を見ようとしない岡本さんはどこから傷があるのかも分からない。



だから、見えるか見えないか分からない際どい首元が開いてる服は着なくなってしまうんじゃないかと。



着ることが出来る服だって沢山あるから、着て楽しんでほしい。



そのキッカケになれば……と思って選んだ服だった。








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