【完】君の笑顔
「え?」
きず……?
ボソリと落とされた言葉を微かに聞き取ったけれど、念のため聞き返すと
岡本さんは、意志を伝えようと決めたのか、さっきよりも声を大きくして話しだした。
「傷!手術したら傷が出来るでしょ?」
「まぁ……」
「それが嫌なの」
あぁ……。
ずっと理解する事が出来なかった彼女が手術を拒否する理由。
それがやっと分かった。
手術を受けた時に出来る“傷”
コレが彼女が拒否する原因なんだ。
「でも……」
口を開きかけた僕の言葉を岡本さんは遮る。
「水着も着れない、胸元が少し開いた服も着れない……若いのに、何も出来ないじゃんか」
黙って彼女の言い分を聞いていく。
「高橋も嫌でしょ?こんなとこに傷がある女とか」
岡本さんは自嘲気味に笑いながら僕を見て、自分の胸を指差した。
今はないけれど、恐らくそのうち手術をすれば出来るだろう傷の辺りを。