【完】君の笑顔
目を開けると、既に明るいシアター内。
スクリーンはもう何も映ってない。
「そろそろ出ないと……」
岡本さんの困ったような声に、意識が鮮明になった。
「もしかして……終わった?」
聞けば、うん、と頷く。
「うわ……寝てた。ゴメン」
コーヒーを持って慌てて席を立つ。
いつ寝たんだろ……。
映画の記憶が全く無いんだけど。
この映画の感想は?って誰かに聞かれたら『客が少なかった』としか答えられない。
「……別に謝らなくても」
「映画、どうだった?」
「面白かったよ?」
普通に。
具体的な感想は無いけど、まぁ面白く無かったわけでは無かったみたい。
「良かった。でも、起してくれたら良かったのに」
全く見れなかった。
「あっそ。寝てる高橋が悪いんだし」
「いつ僕が寝てるって分かった?」
「一時間過ぎた位から」
「そっか」
結構最初の方から気付いてたんだ……。
もしかして、敢えて起こさなかったとか?
岡本さんの優しさで。