【完】君の笑顔
あさみちゃんや椿ちゃんが話してくれてたと思っていたんだけど……どうやら黙っていたみたい。
「離して欲しいなら今すぐ帰して!」
「分かったから落ち着いて」
僕が誘拐しているような言い方は止めてほしい。
本当に悪い事をしている気になる。
……少し強引だけど。
ゆっくりと掴まれていた腕が離れた所で、説明を始める。
「岡本さん、家の鍵持ってるの?」
鍵を探してバックの中を確認しはじめる岡本さん。
一通り探してもバックから鍵は出てこない。
「持ってない……けど!家に帰ったらお母さんいるし」
……そこも聞いてなかったんだ、と言うか岡本さんのご両親、言って無かったんだ。
「いないよ」
「何で高橋がそんな事言うのよ」
「岡本さんのご両親。今日から一泊二日で温泉に行かれてます」
「はぁ?」
そうだよね、普通驚くよね。
素晴らしい位に岡本さんが知らない間に周りで計画は立っていたんだ。
「だから岡本さんは明日まで僕の家で過ごすの」
……家の鍵が無いあたしは、家に行った所で入れない。
だからって高橋の家に行かなきゃいけないの?
「ってか、何で高橋がそんな事知ってんのよ」
不審そうな目を向けてくる。