【完】君の笑顔
手術の際、傷を気にする人はいるけれど、そのせいで手術を拒否している人は初めて見た。
大体の人は、傷を気にしても手術を受ける。
治したいから。
傷よりも、これから先ずっと生きていく事を選択するから。
それなのに、彼女は自分の命よりも傷の無い体の方が大事だって言うの?
そして、この質問。
「僕はそんな事気にしないよ。
体で人を好きになったりしないから。本当に好きならそんな傷気にしない」
真っ直ぐ岡本さんを見て告げる。
僕はそう思ってるから。
好きな人なら、傷なんか気にしないよね?
本気だったら、そんな事で簡単に冷めたりなんかするはずが無い。
でも、僕の質問の答えは岡本さんが期待していた物とは違ったのか。
呆れたような表情を僕に見せた後、ベンチから立ち上がる。
「戻る?」
直ぐにそう聞いた僕に
「ん」
短く返事をし、院内へと入るドアへと歩いていく岡本さん。
僕はその後ろ姿をベンチに座ったまま見る。
……とにかく、理由が分かった。
今まで、清水先生にさえ教えてくれなかった理由を僕に教えてくれた。
その理由を、どうにか説得して解決してあげれば
岡本さんは手術を受けてくれる。