【完】君の笑顔
努力してくれただけで今は十分だよ。
岡本さんが深刻な表情をして言うから僕までつられてそういう表情をしてしまったけど。
難しく考えないでもっと気楽な方が良いかもね。
「ゆっくりで良いと思いますよ。そのうち見れるだろうし」
「分かんない。見れる気がしない」
……焦る事無いから。
「そのうち、傷がある事を忘れて、鏡見て気付いたーなんて事になるよ」
無理矢理気持ちを上げて明るく言ってみれば
「それ、あるかも」
と苦笑いしながらも乗ってくれた。
「さ、ケーキ食べれるんだし、元気出して。……僕も今から風呂入って来ますから」
……深く考えないで、笑ってくれていれば良いから。
「あ!」
バスルームへと入って思い出し、もう一回岡本さんが座っている方へと顔を覗かせる。
「……何?」
「僕が上がってくるまで、ケーキはもう少し我慢してくださいよ?」
一応、忠告。
「分かってる」
あ、怒った。
でも、悲しい顔をされるよりかはマシだよね。
岡本さんは苛っとしているけれど、僕は笑いながら簡単に入浴を済ませた。