【完】君の笑顔





きっと、発病してからは口にしていないと思うから……6、7年ぶりになるんじゃないかな。


その間、ずっと食べたいって思ってきていたはずだから。


それだったらケーキに対する執着心も強くなるはずだ。




「甘いものが大好きなのに食べれないのは辛かったですね」



僕は甘いものが嫌いだからそう思う気持ちはいまいち分かってあげる事は出来ないけれど。



「まぁ……ね。
でも、そのお陰でにきびとか全然出来なくてお肌ツルツルだったけれど」



ケーキを頬張った状態で話す岡本さん。



思春期に多そうな悩み。



「……確かに、肌綺麗ですよね」

「でしょー」



……事実だけど、そこはちょっと謙遜して欲しいな。



「それに、少しずつ食べれるようになるし」


…そうだよ。


もう制限は徐々に無くなっていくから。



「良かったですね」


そう言えば、岡本さんは笑顔。




「どうぞ、飲んでください」



ゆっくりと味わいながら何年ぶりかのケーキ口に運んでは余韻に浸っている。


甘いだろうとカップを進めれば、カップを取ろうとして持ち上げる前にその動きが止まった。








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