【完】君の笑顔
岡本さんの病気を治すのに、一歩近付けたと思うと頬が緩む。
これからは、問題の傷をどうにかする事。
そして、発作を起こさせないように気を付けなければ。
せっかく治る方に一歩近付けたのに、勝手に出歩かれて発作でも起こされたら大変だ。
それに、今回の発作でよく分かったんだ。
今まで岡本さんは、周りに誰かがいる状況で発作を起こして倒れているからここへ運ばれてくるのも早くて良かったんだ。
だけど、もし、一人の時に発作を起こしてしまったら……?
苦しくて、自分ではどうにも出来ないだろうし、気付いてくれる人も居なければ……。
今回も、友達が救急車を呼ぼうとしたのを制したらしいし。
絶対に、抜け出させないようにしないと。
「傷かぁ……」
ずっと疑問に思っていた物が解決したように納得し、声を出した清水先生。
医局へと戻った僕は、机に座っている清水先生を確認して、すぐにさっき岡本さんから聞いた事を話した。
僕に教えてくれた事を、直ぐに清水先生に言ってしまうのはどうかと思ったけれど。
ベテランの清水先生なら、岡本さんと同じ理由で手術を拒む人を見てきたかもしれない。
何か、解決出来る方法を教えてくれるかもしれない。
そう考えて、後で清水先生に報告した事がバレて怒る岡本さんを頭の片隅で想像しながら、
岡本さんが黙っていた、手術を嫌がる理由を報告したんだ。