【完】君の笑顔
「……違う」
違うんだ。
「違う?」
戸惑いがちに繰り返す岡本さん。
「違うよ……仕事だから手術したとか、助けたとか、そんなんじゃない」
そんな単純な思いで手術をしたんじゃなかったんだ。
「え?」
医者らしくない感情も交じってしまっていた。
「僕が、岡本さんを死なせたくなかった……だから、手術をさせたかったんだ」
私的、な意味での。
気付いたのは手術が終わってからだったけれど、考えたらずっと前……から。
「先生なんだから、皆そう思うでしょ?何が違うの?」
胸の中で質問してくる岡本さん。
意味、理解してくれないか……。
「分かってない、岡本さん」
分かって欲しかったな。
そこは察して。
「何が分かってないの?」
涙声で聞かないでよ。
それに……泣かないで。
「……言うつもりなかったんだけどな」