【完】君の笑顔
「……あたし、患者だよ?」
ズッ、と鼻を啜る音がする。
「そんな事知ってる」
涙を拭う作業を続けながら答える。
「良いの?担当の患者さんに手出して」
担当の患者さん、ね……。
まぁ、良くないかもしれないけれど。
「別に関係ないでしょ。心はもうすぐ退院するし、病院での切り替え位できるし」
今まで気付かず抑えられてきたんだから。
病院では患者として見るケジメ位付けられる。
……岡本さんはそんな心配してないで。
「で、心は?僕の気持ち、受けとめてくれるの?」
言って初めて相手の気持ちも分かる事がある。
僕は、岡本さんの思ってる事が知りたい。
「……あたしの性格知ってるよね?」
確認するように質問する岡本さん。
「もちろん。散々振り回されたし」
知ってる。
からかったりして、無茶な事を言ったりするけど、実は真面目に考えていたり。
黙って気を利かせてくれる優しい一面がある事も。
「胸に傷……あるよ?」
声が急に小さくなる。
……一番。気に、してるんだよね?
傷の事。