【完】君の笑顔
≪1≫
問題児
岡本心。
初めて見たのは今から約4年前。
心が発病して2年後の中学3年生の時だった。
僕は大学を卒業して、病院に勤務しだした研修医二年目。
周りの状況にあたふたしていた一年目とは違い、大分慣れてきてスムーズに動けるようになって来ていた時。
心が発作を起こして運ばれてきた。
「……お疲れ様」
容態が落ち着いて病室へと運んだ後、医局の椅子に座って伸びをしていたら戻ってきた清水先生に声をかけられた。
「あ……お疲れ様です」
頭を軽く下げれば、清水先生は隣の椅子を引いてきて僕の隣に座る。
そして手に持っていたカルテを僕の方へと差し出す。
「スムーズに処置もできてたし、もうすぐ研修過程も終了するから話しておこうと思って」
カルテを受け取って誰の物かを確認する。
「岡本……心?」
名前を声に出して、しばらくしてから気付く。
あぁ……さっき処置した子だ。
でも、その子が何か?
カルテから顔を上げて清水先生を見ると、清水先生は柔らかい表情を僕に見せ口を開く。
「心ちゃん。今は僕の担当なんだけど、時期を見て高橋君の担当にしたいと思っているんだ」
まだまだ先の事になりそうだけどね、と付け加えられる。