【完】君の笑顔
だけど、へこんで「そうですか」と見送る訳には行かない。
すぐさま岡本さんに付いて部屋を後にする。
前を歩く岡本さんの背中を見て歩きながら考える。
僕が原因なのだろうか?
昨日の夜だって普通だったし、夜中に急に怒る事は無いだろうし……。
あるとすれば、さっきの……?
僕があの部屋で他の患者さんと話していたから?
……点滴の針がズレて痛そうだったから元に戻していただけだけど。
「怒っちゃいました?」
岡本さんの背中に向かって問えば
「別に」
一言冷たく振り返りもせずに返ってくる。
まだ、返ってくるだけ良いほうですかね……。
僕は少しだけ歩調を早めて岡本さんの隣に移動する。
「……嫉妬とか」
冗談でポツリと言ってみれば、岡本さんは咄嗟に顔を僕の方に上げてきた。
驚いたような表情、そして眉間に皺が寄っている。
冗談で言ってみたけれど……怒った表情から別の表情へと切り替わった岡本さんを見てニッコリ笑った。
「んなわけないでしょ」
少しの間の後に帰ってきた言葉。
僕に何の関心も示してくれないどころか、居ないように扱われていた所から、少し進歩したのかな……と思ったのに。
相変わらず僕の事は無関心みたい。
担当って認められていない証拠だな、と改めてみる。