【完】君の笑顔
「……経過は順調そうですね」
心電図、エコー、どれを見ても問題は無さそうだった。
「まだ傷が痛くて動きたくないって言っていたけれど、なるべく歩くようにしてもらって、後1週間位で退院させよう」
その言葉に、頷く。
僕はその検査結果を詳しく見ながら席へと座る。
「あ、心ちゃんどうだった?」
「……熱があって一応氷枕して今は爆睡してます」
「……珍しいね。症状は熱だけ?」
聞かれて、一瞬戸惑う。
言っても……良いのかな、と。
言ったら可哀相だな、と言う気持ちと
きちんとどんな理由であろうと清水先生に報告するべきだ、と言う気持ちがある。
でもここは……
「あのですね、先生……」
「ん?」
少し眉を上げた清水先生に、椅子ごと少し近づいて、声のトーンを落とす。
「……知恵熱、らしいですよ」
清水先生の目が、きょとん、とする。
そして次の瞬間、清水先生は鼻から息を出しながら口の前に拳を置いて笑いはじめた。
「知恵熱……」
呟きながら笑う清水先生に、僕も苦笑する。