【完】君の笑顔
「他に風邪らしき症状も無いですし、岡本さんが考え事してたって言ってましたから」
間違いないかと。
「珍しいね、知恵熱出すなんて。
何をそんなに難しく考えていたんだろう?」
疑問の目を僕に向けてくるけど、その理由は僕にも分からない。
僕も知りたい。
「……聞いても教えてくれませんでした」
悩み事なら、相談して欲しいのに。
「そうか……まぁ、まだまだ若いからなぁ。考える事がいっぱいあるさ」
特に気にせず、にっこり笑って言うと、くるっと椅子を回して患者のカルテを手に取った清水先生。
その様子を見ていた所で、ふと思い出した。
「……あ、清水先生」
「んー?」
カルテから視線を外さずに答える。
「あの、岡本さんがアイスを食べたいって言っていたのですが……食べさせても大丈夫ですかね?もちろん、糖分控えめな物を……」
さっき、寝る前に僕に言っていた。
アイス買ってきて、と。
その時は、中途半端な約束をして期待させてはいけないと流してしまったけれど。
熱が出ている時位、少しだけでも食べさせてあげたい。