【完】君の笑顔
熱とアイス
静まった一般病棟。
見舞い客もすっかり帰って、まだ消灯時間では無いものの各自自分のベッドで好きなように過ごしていた。
岡本さんは、起きてるかな。
ゆっくりと部屋に入ると、手前のベッドの患者さんはイヤホンをして音楽を聴きながら雑誌を読んでいた。
声をかけてもイヤホンしてるから聞こえないだろうな。
一応「入りまーす」と言ってみたものの、やっぱり気付かず雑誌に見入っている。
岡本さんのベッドの方に目を向けると、看護師が様子を見に来た時にしてくれたんだろう。
なるべく電気が当たらないようにカーテンで仕切られていた。
中で動いている様子も無いので、まだ寝ているんだろう。
とりあえず顔だけ見ようとカーテンの隙間から体を滑り込ませる。
……ぐっすりだ。
僕が見た時と同じようにしっかり瞳は閉じられていた。
熱を確認しようと、岡本さんの額に手を当てる。
熱は、さっき来た時と同じ位の熱さで氷枕はまだ効いていないようだった。
僕の外に出て冷えきった手が、岡本さんの熱を吸収して僅かに温かさを取り戻した。