【完】君の笑顔
何か……?と振り返ってみると
「お名前、かかれてた方が良いかもしれません」
「あ、はい」
言われて、僕は素直に机の上に置かれているペン立ての中からマジックペンを手に取る。
そして蓋の所に“岡本心”と書いて、冷凍庫に入れた。
「……何よこの、岡本心って」
次の日。
本当に知恵熱だったらしい岡本さんは、しっかり寝たため頭も休ませる事が出来て。
夜中から少しずつ下がっていき朝方にはすっかり平熱に戻った。
アイスの存在を思い出したらしく、食べたいって言うから持ってきてあげると
蓋に書いた名前を見て不機嫌そうに声を漏らした。
「冷凍庫に入れる時、名前書いてた方が良いって看護師さんに言われたんですよ」
「……呼び捨て」
「……すみません」
嫌そうな顔をしながらベリッと音を出して蓋を剥がすと、ゴミ箱の中に投げ捨てた。