【完】君の笑顔
≪3≫
経験者
「高橋先生」
医局で仕事をしていると、看護師に呼ばれて顔を上げる。
「横田さんがいらっしゃってますが……」
僕が用件を聞く前に、看護師は笑顔のまま告げてくれた。
「あ、はい。行きます」
立ち上がって早足でエレベーター近くの長椅子の方へと歩いていく。
「高橋先生」
僕が傍まで行くと、僕に気付いてにっこり笑いながら立ち上がった。
「お久しぶりです。あ、座ってください」
僕も笑いかけて座るように促すと、ゆっくりと腰を下ろす。
僕も、その横に腰を下ろした。
「今日は……定期健診ですか?」
「はい。あ、でも私じゃないんですよ?この子の健診で」
そう言いながら横田さんは視線を下へ落とす。
僕も、横田さんの腕の中にいる赤ちゃんへと視線を向けた。
ピンクの可愛い服を着て、寒くないように包まれている赤ちゃん。
目はパッチリと開いていて、小さい手を空中で動かしている。
「わ……可愛い」
「クス……ありがとうございます。良かったね」
覗き込むと、目が合ってじっと僕を見つめてくる赤ちゃん。
誰この人?なんて思ってるのかな。