【完】君の笑顔
共通な好み
≪高橋先生、岡本さん、戻って来ましたよ!≫
岡本さんと連絡を取ることを諦めて数十分。
心配しながらもやらなければいけない仕事をこなしていると、
やっと連絡が入って早足で岡本さんの部屋へと向かう。
部屋へ行くと岡本さんは疲れたようにベッドに真横に寝転んでいて。
足をベッドから投げ出して天井を見つめていた。
その姿を見て安堵する。
無事に帰ってきてくれて良かった、と。
頭の中に浮かんでいた悪い不安が一気に消えて、思わず溜息が出た。
「何処に行ってたの?」
「あの人の心配した方が良いんじゃないの?
居ないけど……」
聞いた質問をサラリと無視して、上半身を起こしベッドに座りなおした岡本さんはベッドを指差す。
岡本さんが指差した方を横目で見てから、また岡本さんへと視線を戻した。
「検査に行ってるよ。
岡本さんみたいに病院を抜け出す人なんて居ないんだから……」
岡本さんを探している途中で、看護師と一緒に歩いている姿を見かけたから。
それに、普通ベッドに居なくても抜け出したんじゃないか、と言う心配は浮かばない。
……岡本さん以外は。
トイレか売店、または見舞いに来てくれた人とどこかで喋っているのだろう…って思う。
他の患者さんは抜け出したりしないし。