【完】君の笑顔
大体、人の事言ってる場合じゃないでしょ?
「あっそ」
僕の問いかけから逃げる為に咄嗟に話をしたんだろう。
元々そんなに同室の患者さんがどこに行ったか興味が無かったらしく、どうでも良さそうに呟かれた言葉。
話を逸らされたけれど、これで終わるつもりはない。
しっかり聞かなければいけない事を聞いておかないと。
「それより!
携帯に電話をしても出なくて……どうしたかと思いました」
話を元に戻す。
今まで絶対に出てくれていたのに。
電源は切ってないからなり続いていたはず。
外に出た時は必ず持ち歩いているから、気付かないはずもないだろうし……。
「電話があってすぐ帰ろうとしたから出なかった」
僕から視線を逸らして動き出す岡本さん。
やっぱり電話には気付いていたんだ。
すぐ帰ろうとしてくれた気持ちはすごく嬉しい。
だけど、岡本さんがそうしてくれている事は電話をかけている僕は知らない。
何かあったのでは?と心配になる。
すぐに帰るつもりでも、電話には出てほしい。