【完】君の笑顔
「今日は帰ってくるつもりが無いかと思いました」
そう言うと岡本さんの表情があからさまに険しくなる。
「あのね、あたし一応入院してんの。
抜け出しても帰らないって事はしないし」
自信満々に言うけれど、抜け出す事自体有り得ないんだからね?
無断外泊なんてもっての他。
「一応入院してるんだから抜け出さないで大人しくしてて欲しいんだけどね……」
「それは無理。
でも、前よりも焦ったりしてないじゃん。慣れてきたみたいだし……」
ふっと少し残念そうに笑みを零した岡本さん。
焦ってない?
慣れてきた?
そんな風に見えているのかもしれないけれど、実際はまったく違う。
「そんな風に見えました?
内心すっごく焦ってましたよ。
慣れるなんて事ないです」
僕が心臓バクバクして大変ですよ、とニッコリ笑う。
何回抜け出されても慣れないし、焦る。
どこへ行った?
何をしてるの?
発作起こしてないよね?
落ち着こうと冷静なふりをして表情には出ていないかもしれないけれど、内心はかなり焦ってる。
電話で声を聞いて、無事に病院に戻ってきた姿を見て
僕がどれだけホッとするか、知らないでしょ?