【完】君の笑顔
「そういう高橋は何月生まれ?」
手術の話を終わらせるように僕に質問してくる。
「僕ですか?僕は9月です」
「じゃあ下の名前は?」
更に質問を続けようとする岡本さん。
「僕に興味持ってくれました?」
岡本さんが僕に質問してくるなんて本当に珍しい。
冗談っぽく聞いてみれば「いいから」と僕の返答を待つ。
「……しゅう」
「しゅう?」
「秋って書いてしゅうです。
高橋秋。秋生まれだからってそのまんまでしょ」
9月。まだ夏のように暑かったみたいだけど、秋に生まれたからって付けられたこの名前。
漢字も変える事も無くそのまま付けられた。
本当にごく普通の名前だな、と自己紹介する度に思う。
「かっこいい名前じゃん」
てっきりいつもの毒舌で、『そのまんまじゃんとか、普通ー』とか言われる気がしていたのに。
岡本さんが呟くように零した言葉は、意外なものだった。
かっこいい名前、だなんて初めて言われたような気がする。
それも予想もしていなかった人から。