君にキス
横を通った時だった。


(クイッ…)


髪の毛が何かに引っ張られた。


『うぇっ!?…』


長い髪の毛は横を通り過ぎた青年の制服のボタンに…

絡まってしまっていた。


うぁ…やばい…


何も話す気などなかったのだけれど…そうも言っていられなくなった。


あたしは歩くのを止めて彼に頭を下げた。


『ご…ごめんなさい。髪の毛…』

「あ…いえ、俺だったら大丈夫ですよ」


彼の声は優しくて穏やかな感じがしたので安心した。


絡まった髪の毛を一生懸命に離そうとするけれど…なかなかいうことをきかない。


…うぐぅ…っ最終手段っ!!


チャキンッ…


ポケットに入れていたカッターを取り出して髪の毛を切ることにした。
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