SAYONARA
「ありがとう。さすがだよな」

「いつまでもあたしを頼りにしないでよね」

 僅かに本心を込めた言葉に、彼は悪いと笑顔で応える。

 担任の木元が入ってきて、騒がしかった教室が一瞬で静かになる。彼は教卓の前に立ち、名前を順に呼び出す。

 功の番が来て、彼は軽く返事をし、英語のノートを睨むように見つめていた。

 そんな生真面目なところは嫌いじゃない。むしろ、彼の中で嫌いなところを探すほうが難しい。

 あたしの中での功の気持ちはそんなところだった。だが、功の気持ちはあの美少女に向いている。

 彼の中でのあたしの位置づけはノートを見せてくれる、頼りになる幼馴染といったところだろう。

 幼馴染がいつしか互いに意識する。それがいつしか恋愛に発展するなんて実際はありえないんじゃないかと思う。

そんな人もゼロではないと思う。

でも、それはただの当たりくじを引いただけだと思う。そして、あたしはそんな当たりクジを引き損なってしまった。
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