SAYONARA
 二人がいつから付き合いだしたのかあたしは正確には知らない。だが、その前から彼女のことは少しだけ知っていた。一年六組の北村美枝だ。

 あまり他の学年の子のことは詳しくはないが、彼女を知っている理由は二つある。

 一年で彼女のクラスだけ、二年一組であるあたしのクラスの隣にあること。

 もう一つは。


 あたしは首を横に振り、痛む胸に気付かない振りをして歩を進めた。

ほんの数分立ち止まっていただけなのに、閑散としていた通学路には人が現れ始めた。

 百メートルほど先にある曲がり角には見たことのない生徒の姿がある。

もう功と彼女は曲がり角を曲がり終えたのかあたしの視界にはいなかった。そのことにほっと胸を撫で下ろす。

 もう二人が一緒にいるのを見かけるようになって二ヶ月ほどが経過するのに、あの姿だけは見慣れない。

 だからそんな心の中を悟られないように精一杯の応援を表面的にしていた。
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