SAYONARA
「お礼するよ。柚月のほしいものを何でもいいから言って」

「お礼って」

 あたしにとって何よりも嬉しいのは功の合格だった。

 だが、そんなかっこつけた台詞を言いたくなくて、後腐れもない妥協案を選んだ。

 あたしが望んだのは功が小さなころから集めていた漫画を貸してくれというものだった。

 彼は笑顔でそれを受け入れる。あたしがとりにいくと言っても、家どころか部屋まで運んでくれた。

 功に部屋の中に入られるのは無性に恥ずかしかった。
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