SAYONARA
 母親から頼まれていたケチャップを買い物籠に寝そべるように入れて、レジで支払いを済ませると、重い足取りで店を出た。

 町並みはオレンジ色に染まり、どこかおぼろげで頼りなさそうだ。

 ゆっくりと足を進め、息を吐く。

 どんなに艶やかな景色が目に飛び込んできても、思い浮かぶのは楽しそうな二人の様子だった。

 どうしてそんなに彼と一緒にいると笑うんだろうか。

 あんな場面に遭遇してしまうなんてやっぱりあたしは間が悪い。

 その記憶を思い出しては忘れ去ろうとし、その繰り返しの間、歩を進める。
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