SAYONARA
彼の提案
 茶色を基調とした外壁に、店の中を見通せるほどの大きなガラスが全面に張られていた。店内にはまばらに客が連在している。

 この前、あたしたちに注文を聞いた女性が店の中を往来していた。あたしがこの店の前に立った十分ほどの間にも、何人かの客が行き来している。繁盛しているのだろう。

 二人の関係をはっきりさせるために消去法で選んだのは彼に聞くという選択肢だ。
 美枝に聞く勇気はあたしにはない。


 あたしがお店の前にいる理由は、彼の姿がまだ見えないことだ。

 さすがにお姉さんにそのことを聞くために店内に入るのには躊躇いがあった。


 足元に影が届き、思わず振り向いた。

 すると、愛想良い笑顔を浮かべた男性が立っていた。

 彼の視線があたしの足元まで届き、思わず足を後退させた。

「店内でできそうな話?」

 あたしは思わず首を横に振る。そこで我に返った。
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